【タロット大事典】 (東條 真人著/国書刊行会刊/1994)
2009.4.4 レビュー
この本に出会ったのは、私がタロット占い師としてプロデビューした1994年であり、そしてこの本によって私はタロットリーディングの基礎を築くに至ったのである。 また私がタロットの中で最もポピュラーであるライダーウェイト版を選んだのも、本著がきっかけである。
本著は三部構成となっており、第一部では大アルカナと小アルカナの解説を物語形式にて試みている。第二部ではスプレッドについて取り上げており、そして第三部では意味の研究と題してタロットに描かれたシンボルの意味やアルカナに現れる夢シンボル等について説明を行っている。
特に秀逸でかつタロット習得の役に立つのが第一部であろう。この第一部で行っている大・小アルカナの解説は先述の通り物語形式であるが、これが実に判りやすいのだ。 大アルカナにおいては、古代ペルシアの「光と闇の戦い」をモチーフとして「愚者」に描かれた若者を主人公とし、コスモス創造以前の出来事や転生、そしてコスモクラトール(天軍の指揮者)ミトラが行う光と闇との戦い等様々なイベントを通過する事によって、大アルカナの意味がより立体的に理解できるような仕組みとなっているのである。
また小アルカナについても、それぞれ「若きアレクサンダー大王の東方遠征の物語(ワンド)」、「愛の真実を求める王子の物語(カップ)」、「革命運動に身を投じた若き女性闘士の物語(ソード)」、「老城主が町の娘に語る人生の物語(ペンタクルス)」というように、各スートの10からエース(1)へと物語が進められていくのだ。
大・小アルカナいずれも、ただの物語だけではなく、カードの表す願望面や正位置と逆位置の関係、正・逆それぞれのキーワードや時間的変化等、カードリーディングを行う上で大いに役に立つ情報が網羅されており、この第一部だけでも相当なボリュームになっているのだ。
続く第二部以降では、預言者スピターマ・ザラシュストラが広めた「ミトラ教」にまつわる話や祈りの言葉の紹介、スリーカード法やケルト十字などおなじみのスプレッドについての解説、そしてカード内の色や場所・人物の配置や構図における意味の違いなど、正に「タロット大事典」という名を語るに相応しい内容で我々を圧倒してくれる。
ただしこの本、ミトラ教の思想をベースに作られている為、宗教に抵抗のある人にとっては宗教表現部分を相当に割り引いて受け止める必要があるだろう。まぁ受け入れてもそれはそれで悪くは無いのかも知れないが。
しかしながらそういった面を差し引いても、本著は初級者から中級者にかけてのタロット学習に大いに役に立つ事請け合いである。値段(定価¥4,200)だけの事はあると私は思う。
|