【ゲマトリア数秘術―聖書に隠された数の暗号】 (久保 有政著/学習研究社刊/2003)
2008.9.13 レビュー
この本の著者である久保有政氏はサイエンスライター・聖書解説家の肩書きを持っているが、占い師ではない。そしてこの本も「数秘術」と銘打っているが、その実、占い本ではなく聖書に隠された暗号を解読する為の方法(ゲマトリア)について書かれた本なのである。
ゲマトリアとは文字を数字に置き換える事を表すが、本著では旧約・新約聖書それぞれを解読するに当たり、ヘブル語(ヘブライ語)とギリシア語のゲマトリア変換表を掲載している。 ギリシア語を例に取ると、α=「1」、β=「2」、γ=「3」・・・という具合にそれぞれの文字が数字に対応し、その数字を用いて聖書内の文章や単語を数字に置き換え、同じ数値の単語同士は共通点を持っている、というように解読していくのである。
例えば旧約聖書の「創世記」にヘブル語で書かれている「メシア(救世主)」と「蛇」は共にゲマトリア変換すると「358」となる。「メシア(救世主)」と「蛇」とでは全く異なる概念と考えがちだが実は大いなる共通点がある、という具合である。 このような方法で聖書内の様々な単語や文章をゲマトリア変換し、独自の解読を行っていくのだ。
また、聖書内に出てくる数字についてもその本当の意味を測るべく解読を試みている。 「ヨハネの黙示録」でおなじみの「666」や終末の「144000」人。「ヨハネの福音書」に出てくる魚の数「153」などなど、様々な数字を取り上げ、ゲマトリア変換を行った単語との共通項を見出していくのである。
そして本著の最後の方では、聖書に書かれた「予言」をゲマトリアによって炙り出すという事も行っており、聖書の記載と実際の歴史の流れとの間に横たわる思わぬ共通点を感じずにはいられないであろう。
これら聖書の解読を行うに当たって、実に様々な数字が登場するが、本著ではこれらの数字を導く為にある種の数学的知識も必要とされる。がしかし高等数学とまではいかないので、数字が不得手で無ければ抵抗無く読み進められる事だろう。
ただし何分取り扱っているテーマが「聖書」であり、しかもその深淵なる秘密を暴こうとしているわけでもある為、そういったテーマや行動について敬遠するデリケートな方も多いかも知れない。
しかしながら本著を読み進めていくにつれて、聖書の秘密の一端に触れるような感じを得るのは私だけでは無いと思う。本著を読み終わった後に腰を据えて聖書を読み解く事もまた一興ではないかとも思う。
|